【迷走する普天間問題】4/5 沖縄への負担軽減には防衛体制全体の見直しが条件
徳之島もグアムも論外、長崎と辺野古を提案する
迷走する普天間問題に元空将が緊急提言
JBPRESS 2010.05.19(Wed) 岡本 智博
このように考えてくると、辺野古地区に建設しようとしている輸送部隊を、徳之島とか、マリアナ諸島の島とかいう議論は、全く的が外れている議論であるということが分かるはずである。
米軍に対する施設・区域の提供は、決して沖縄に任せていればよいというものではない。現に、横田、横須賀、岩国、厚木、三沢、佐世保など、本土にも多くの米軍に対する施設・区域の提供が行われている。
沖縄への負担軽減には防衛体制全体の見直しが条件
問題は、沖縄にその負担が偏り過ぎていることである。この実態をどのように解決するか。米軍に対する施設・区域の提供をやめるのであれば、自国による防衛体制を大きく見直さなければならない。
自衛隊の量的・質的拡大も必要となろう。このような意味で「普天間基地」移設問題は、優れて我が国の防衛・安全保障問題そのものなのである。従ってこの問題は、国民が挙げて考えるべき課題であり、沖縄に委ねておけばよいということではないはずである。
日米の政府間協定である「在沖米海兵隊のグアム移転に係る協定」、通称「グアム協定」は、まさに政府間協定であり、政権交代であってもその大枠は遵守されるべきものであろう。米国も微修正は受け入れる用意があるとしており、その限度において、現時点では決着を図る必要がある。
他方、沖縄に安保条約第6条が示す施設・区域の提供義務を約70%も負わせているままの現状は、ほかの都道府県の鼎(かなえ)の軽重を問われる事態である。かかる現状の中で最近では、岩国市が厚木市からの海兵部隊の受け入れを容認しているのである。
この例に見られるように、沖縄からの海兵部隊の移転を受け入れるためには、海兵隊員4800人を含む航空戦闘部隊を受け入れる必要がある。
辺野古案の微修正と陸上部隊の長崎への移設
そのような制約の中であえて火中の栗を拾う覚悟を持って提案するのであれば、現在存在する陸上自衛隊駐屯地と沖縄のキャンプ・ハンセンとの施設・区域の交換により、海兵隊陸上戦闘部隊の受け入れ場所を定め、これを基礎にその他の部隊を受け入れることができる地域を見出す必要があろう。
これもすべて、移設される部隊を受け入れる県民の理解と覚悟が必要不可欠であり、その対象となったすべての機関や部隊との調整の必要性を含め、決して単純なことではない。
しかし、将来、我が国の政治課題として時間をかけて取り組むべき課題として、具体的には次のように考えてはどうであろうか。